『推し、燃ゆ』のあらすじと感想!第164回芥川賞受賞作品!

  • 2022年5月10日
  • 2022年5月10日
  • 読書

みなさんこんにちは。

今回の小説はこちらです。

『推し、燃ゆ』宇佐見りん

 
コーヒー豆
著者の宇佐見りんさんは21歳という若さで本作を書き上げ、第164回芥川賞を受賞しました!

1.こんな人におすすめ!

・推しがいる人の気持ちに共感したい人

・推しがいる人の気持ちを知りたい人

・芥川賞受賞作品をサクッと読みたい人

2.あらすじ

自分の推しがファンを殴ってしまったことを知った高校2年生の山下あかり。

学校での生活やバイトもうまくいかず、家でも家族とギクシャクした日々を過ごしていたあかりにとって、アイドルグループ「まざま座」のメンバーの”上野真幸うえのまさき”は唯一の心の支えであり、生きがいだった。

彼を推すことが生活の中心であり、彼の存在が心の支えであるあかりにとって、彼がファンを殴ったという事実は彼のファンをやめる理由にはならなかった。

しかし、自分の推しが「燃えていく」現実を突きつけられたあかり。

彼女の生活はどうなってしまうのか‥‥。

3.『推し、燃ゆ』を読んだ感想

1.主人公の「推し」に対する想い

主人公のあかりはまざま座のメンバーである”上野真幸うえのまさき”の強烈なファンであり彼を推しているんですが、彼に対しての想いが尋常じんじょうではないものとなっています。

そのことがわかる部分があるので引用します。

あたしには、みんなが難なくこなせる何気ない生活もままならなくて、その皺寄せにぐちゃぐちゃ苦しんでばかりいる。だけど推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな。

『推し、燃ゆ』宇佐見りん p,37 l,10

ここで注目してほしいのが「背骨」という表現です。

背骨の役割について調べてみたんですが、背骨には「体を支える(支持)」「体を動かす(運動)」「神経の保護」の3つの役割があるみたいです。

人間にとって必要不可欠な部位ですが、主人公のあかりは推しを推すことが背骨だと言っているんです。

この引用部分を読んだときに、推すってこういう事なんだと思いましたね。

「推す」ということは「好き」と似たような意味だと思っていましたが、「好き」という表現を遥かに超越したものみたいです。

2.タイトルに込められた意味

本作のタイトルは『推し、燃ゆ』ですが、これは一体何を表すのか。

主人公の推しの”上野真幸”がファンを殴って炎上していく様を表していると考えるのが自然です。

しかし、先ほども言ったように主人公にとって推しは生活の中心であり「背骨」です。

そのため、推しが燃えるという事は自分自身も燃えるということではないのでしょうか。

実際に、本の表紙を見ても主人公のあかりだと思われる女の子が糸のようなものに絡まれて上から落ちていく様子が描かれています。

これが「燃える」ということを表現していると推測します。

つまり、このタイトルは推しが燃えていくのと同時に自分自身も燃えていくことを表現しているんだと思います。

3.主人公のその後についての想像がかきたてられる

物語の序盤で、主人公のあかりが病院でふたつの診断名が告げられています。

病名こそ明らかになっていないものの、作中の主人公を見ているとその病名は”発達障害”関連のものだと思います。

その主人公の生きがいであり唯一心の底から楽しめるものが推しを推すことです。

しかし、その推しが暴力事件を起こしてしまい、「燃えていきます」。

本作ではその推しが燃え尽きたところまでしか描かれておらず、推しが燃え尽きた後の主人公がどうなったのかは描かれていません。

本文の最後にこれからの人生に対する主人公の心構えのようなものが描かれていましたが、これからどんな生活を送っていくのか、想像せずにはいられませんでした。

4.さいごに

本作は、自分の推しが燃えていくさまを見た主人公のあかりに焦点を当てて物語が進んでいきます。

それと同時に、自分の生活が上手くいかない主人公の心情が描かれており、それは生きづらさを感じている人にとっては共感できるものになっているかもしれません。

そして、不器用にしか生きれなくても推しを推しているときだけ精力的に活動している主人公をみて、何かを思い切り好きになることってとても素晴らしいことなんだと思いました。

推しを推すってそれなりにお金もかかるし時間も削られると思っていましたが、それ以上に自分の生活を豊かにしてくれるんですね。